東京都交響楽団第880回定期演奏会Bシリーズ

東京都交響楽団第880回定期演奏会Bシリーズ
2019年6月25日  19時00分 サントリーホール
マチェイ・トヴォレク、クシシュトフ・ペンデレツキ(指揮) 東京都交響楽団
庄司紗矢香(ヴァイオリン)

ペンデレツキ:平和のための前奏曲(2009)
ペンデレツキ:ヴァイオリン協奏曲第2番《メタモルフォーゼン》(1992-95)
ベートーヴェン:交響曲第7番イ短調作品92
  
 平和のための前奏曲がマチェイ・トヴォレクの指揮です。第2次世界大戦の開始から70年ということで書かれた曲です。金管と打楽器のための曲で、冒頭にファンファーレがありますが、穏やかな響きです。素直に平和を祈る音楽と感じました。都響の金管は力強さと柔らかさを持っています。

 2曲目からはペンデレツキ指揮です。このヴァイオリン協奏曲よく解りませんが、庄司の楷書風の演奏や集中力と都響の特質からか、いつまでもこの音楽の世界に留まっていたい気持ちいい緊張感に包まれました。恐怖や心配のための緊張ではなく、期待感を持った緊張です。交感神経が活性化しているのにイライラしない、焦らない今までにない気分でした。ほんとにいい演奏でした。アンコールはないと思っていましたが、J.S.バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番ハ長調BWV1005より第3楽章、穏やかさをたたえ、緊張感を消去してゆきました。

 後半のベートーヴェン、都響の弦や管楽器、打楽器が生きいきと演奏し、いわゆる老成した演奏と大違いです。若さと活気にあふれ、曲の魅力をペンデレツキと都響は導き出し、ベートーヴェンとペンデレツキを同じ感覚で聴くことができました。
 コンサートマスターは矢部達哉氏。

京都市交響楽団東京公演

京都市交響楽団東京公演
2019年6月23日   17時   サントリーホール
広上淳一(指揮) 京都市交響楽団
五嶋 龍(ヴァイオリン)

ブラームス:悲劇的序曲作品81
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35
ラフマニノフ:交響的舞曲作品45

 京響の東京公演で、客席もにぎやかです。
 京響の楽団長の話の後、ブラームス、気合十分です。
 
 これからの2曲都響で最近聴きました。どうしても比較してしまいます。
まずはコルンゴルト、6月2日のリットン、三浦文彰の都響は気負いないさりげない表現ですたが、今回の五嶋は華麗な音色と相まって、アメリカで成功しているよ、といった趣きでした。スッキリしたいい演奏でした。アンコールはクライスラーのレチタティーボとスケルツォカプリス作品6.

 後半はラフマニノフ、4月20日の大野指揮は曲の内面にある景色に焦点を合わせた演奏です。広上は第1楽章の木管の魅力的な対話、第2楽章の舞踊性(自ら指揮台で・・・)、第3楽章の動的な側面など特徴がありました。
京響は木管が見事で、サクソフォンも魅力的でした。
 コンサートマスターはゲストコンサートマスターの寺田史人氏。

 アンコールにエルガーのニムロッド。情感あふれるいい演奏でした。また聴きたい京響です。  

東京都交響楽団第879回定期演奏会Cシリーズ

東京都交響楽団第879回定期演奏会Cシリーズ
2019年6月8日  14時00分 東京芸術劇場
アレホ・ペレス(指揮) 東京都交響楽団
長尾洋史(ピアノ)
加藤のぞみ(メゾソプラノ)

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」
(1947年版)コンサート・エンディング
ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」(全曲)

 池袋へ。曇天からいつのまにか晴天に。いい日和です。
 
 アレホ・ペレスは歌劇の得意な指揮者の様で、ペトルーシュカでは実際のバレエを見るように描写にすぐれ、解りやすい指揮でした。第4場の「御者の踊り」から「仮面」への場面では静謐さの中からの盛り上がりゾクゾクしました。

 三角帽子でも同様です。バレエが目の前で繰り広げられているような明解な演奏です。まずは序奏のトランペット、拍手、粉屋の女房の唄からワクワク感大です。第1幕から第2幕にかけ、いわゆる民族色たっぷりではありませんが、切れ味よくサッパリとした情感があります。そして「終幕の踊り(ホタ)」での乱れない盛り上がり。
いい指揮者に出会えました。今後が楽しみです。とはいってもいつ聴けるのやら。

 都響はべったりとしない明るい弦、好調の木管、打楽器、そして明るい金管いつも通りみごとでした。加藤のぞみのメゾソプラノもいい雰囲気です。
 コンサートマスターは山本友重氏。

東京都交響楽団プロムナードコンサートNo.382

東京都交響楽団プロムナードコンサートNo.382
2019年6月2日  14時00分 サントリーホール
アンドリュー・リットン(指揮) 東京都交響楽団
三浦文彰(ヴァイオリン)

ロウ(コウレッジ編曲):ミュージカル「マイ・フェア・レディ」序曲
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35
ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調作品95B.178「新世界より」

 一見何の変哲もないプログラムですが、3人の作曲家ともヨーロッパからアメリカに渡った共通点があります。
でまずはロウ、ベルリン生まれでニューヨークに渡ったとは知りませんでした。さらに映画版はアンドレ・プレヴィンが一部作曲したと。演奏は輝かしい見事なものでした。フル編成でこの曲、何とも豪華です。

 次いでのコルンゴルト、ブルノ生まれでハリウッドです。1937年作で1945年改訂です。ロマン派の残像とアメリカの映画音楽が見事に融合されています。リットンはそのあたりをきれいにさりげなく現し、三浦も同様で気負いなくさりげないいい演奏でした。アンコールはパガニーニ、ネル・コウ・ピウの主題による変奏曲より。

 最後はドヴォルザーク、予想通り豪華で洗練された演奏でした。もう少し陰りがあってもと思いましたがある意味スッキリします。都響は明るい弦相変わらず好調の木管、パワーありながらきれいな響きの金管、エンジン全開でした。
 コンサートマスターは矢部達哉氏。

東京都交響楽団第878回定期演奏会Aシリーズ

東京都交響楽団第878回定期演奏会Aシリーズ
2019年5月28日  19時00分 東京文化会館
アンドリュー・リットン(指揮) 東京都交響楽団
アンナ・ヴィニツカヤ(ピアノ)

バーバー:管弦楽のためのエッセイ第2番作品17
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番ハ長調作品26
チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調作品16

 時間を作り東京都美術館のクリムト展へ。クリムトというとユディトⅠや接吻、ベートーヴェンフリーズのような金で印象づけられる作品を思いますが、印象派やゴッホ、ジャポニズムを見事に消化した作品、おとなしい上品な人物画や風景画など様々な作品も初めて知った次第です。見事な才能です。展示も適度な数で解りやすい解説文です。

 トボトボ歩いて文化会館へ。これで曲目がマーラー、ツェムリンスキーなどなら最高なのですが。

 最初はバーバー。穏やかな曲ですが静謐な部分もあれば大いに盛り上がるところもあり、懐の深い何度か聴いたい曲です。
 次いでプロコフィエフ。ヴィニツカヤの歯切れいいピアノが見事でした。強大音を響かせたり特徴のある表情や動作はありません。スポーティなこの曲の飽きの来ない演奏で、この日一番の盛大な拍手でした。
 最後のチャイコフスキー、予想通りの元気いい演奏でした。第2楽章などはもう少し陰影のある演奏が好きですが、これも正解でしょう。見事な盛り上がりの終盤です。

 都響は弦は明るめの音、木管は相変わらず見事、金管はいつも以上に明るく華やかです。
コンサートマスターは四方恭子氏。

東京二期会コンチェルタンテシリーズ「エロディアード」

東京二期会コンチェルタンテシリーズ「エロディアード」
2019年4月28日    14時     オーチャードホール
ミシェル・プラッソン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
ジャン:渡邉公威 
エロデ:枡 貴志
ファニュエル:北川辰彦
ヴィテリウス:薮内俊弥
大祭司:水島正樹
寺院内からの声:吉田連
サロメ:國光ともこ
エロディアード:池田香織
バビロニアの娘:徳山奈奈
合唱:二期会合唱団

マスネ:歌劇「エロディアード」

 サロメのマスネ版と言いたいところですが、生首云々がないので、それほどおどろおどろしい訳ではありません。また「マノン」や「ウェルテル」のように抒情的なオペラでなく、いわゆるグランドオペラです。まあマスネーの原形が見えるような。であまり聴きやすいものではありません。

 演奏ですが、エロディアードの池田が芯の通った声で王妃や母としての威厳と弱みを表現します。エロデの枡も同様です。サロメの國光もこのオペラでのサロメにあった声質でした。ファニュエルの北川も好演。ジャン役はオーケストラを飛び越える声があれば。

 マスネのスペシャリスト、プラッソンは肩に力を入れず、ゆったりとした指揮で、まあ自家薬籠中の物、プラッソンにとっては日常なのでしょう。
 東京フィルはオペラらしい演奏をしていました。合唱も同様です。

 セミステージ形式で、舞台後方に描写的で解りやすい、映像が投影されていました。

 めったに聴けないオペラで平成を締めくくることができました。

東京都交響楽団第877回定期演奏会Bシリーズ

東京都交響楽団第877回定期演奏会Bシリーズ
2019年4月20日  14時       サントリーホール
大野和士(指揮) 東京都交響楽団

武満徹:鳥は星形の庭に降りる(1977)
シベリウス:交響曲第6番ニ短調作品104
ラフマニノフ:交響的舞曲作品45

遠方勤務のため武満作品は聴けず。このプログラム前半は静謐、後半は不思議な世界。
よく考えられた構成です。
 シベリウス6番は解りにくい作品ですが、今回も大野の指揮で少し理解できましたが、静かな雪の降るような北欧風などど類型化できない、不思議な魅力の作品です。
弦楽器は硬質で美しく繊細、木管は相変わらず見事です。
 コンサートマスターは四方恭子氏。

 後半のラフマニノフ、見事でした。第1楽章では活躍できた過去を振り返る人間の一時の哀愁といった趣きです。サキソフォン、音も表現力もお見事です。第2楽章はなぜかのらない重い舞曲、第3楽章は怒りの日が現れ、終盤にまで続きます。この曲も木管楽器が見事、金管楽器底光りのする音色。
 ラフマニノフの最後の作品ですがどうように人生を振り返っているのでしょうか。なぜ怒りの日なのでしょうか。今後考えたいと思います。

東京都交響楽団第876回定期演奏会Cシリーズ

東京都交響楽団第876回定期演奏会Cシリーズ
2019年4月20日  14時00分 東京芸術劇場
大野和士(指揮) 東京都交響楽団
ニコライ・ルガンスキー(ピアノ)

グリーグ:ピアノ協奏曲第1番イ短調作品16
ベルリオーズ:幻想交響曲作品14

 客席はほぼ満員、ルガンスキーのピアノ。何というか剛速球で全曲通した感じです。爽快な演奏でしたが好みもあるでしょう。

 後半のベルリオーズは描写的で解りやすく正統的な名演でした。時おりこんな音やひびきがあったのかと。第1楽章冒頭から繊細でやや硬質な弦に魅せられます。濃厚な演奏でなく、第2、第3楽章も淡々としています。第2楽章はコルネット?トランペット?のオブリガートが加わります。第4、第5楽章もけれんみのない迫力です。
木管楽器が随所に魅力的な音、金管楽器は粗野にならない力強い響き、打楽器の切れ味のよさ、最高でした。
 コンサートマスターは矢部達哉氏。

 晴天の休日、気分の晴れるコンサートでした。

東京春祭合唱の芸術シリーズvol.6

東京春祭合唱の芸術シリーズvol.6
2019年4月14日 15時 東京文化会館
大野和士(指揮) 東京都交響楽団
ヴァルデマール王:クリスティアン・フォイクト(テノール)
トーヴェ:エレーナ・パンクラトヴァ(ソプラノ)
農夫:甲斐栄次郎(バリトン)
山鳩:藤村美穂子(メゾ・ソプラノ)
道化師クラウス:アレクサンドル・クラヴェツ(テノール)
語り手:フランツ・グルントヘーバー(バス・バリトン)
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:マティアス・ブラウアー、宮松重紀

シェーンベルク:グレの歌

 こんな解りやすいシェーンベルクを初めて聴きました。合唱あり、大編成となると大野と都響の得意分野です。
第一部の冒頭から木管が生き生きと演奏します。結構描写的で目の前に情景が浮かびます。大編成の弦楽器も今日は派手な音色で、金管の底光りする音色、切れのいい打楽器などなど。大野も明晰で解りやすい指揮、最終盤のおどろおどろしい盛り上げ。
 コンサートマスターは山本友重氏。

 合唱も曲想に応じた荒々しさと緻密さがあり、見事でした。
 独唱陣は藤村の山鳩が圧巻でした。明晰な声、表現力とも脱帽です。甲斐も美声で確固とした存在。パンクラトヴァも劇的な表現ですが、フォイクトは大編成のオーケストラを後ろに声が生かされません。そしてグルントヘーバー味のある歌唱です。
 
 まあこんな感想しか書けず情けなく思いますが、大野と都響の演奏の中でも屈指の演奏あるいは随一の演奏でしょう。

東京都交響楽団第875回定期演奏会Cシリーズ

東京都交響楽団第875回定期演奏会Cシリーズ
2019年3月31日  14時00分 東京芸術劇場
エリアフ・インバル(指揮) 東京都交響楽団
サリーム・アシュカール(ピアノ)

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番ハ長調作品15
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調作品64

 ステージ上のピアノを見ると、C.BECHSTEINの文字が。名前は知っていながら聴くのは初めてです。何というか別世界へ入ってしまった趣でした。スタインウェィのように力強い音でなく、明るくてくっきりとした音色です。アシュカールはその特色を生かした、リズムに乗った演奏でした。アンコールはトロイメライ。

 後半はチャイコフスキー、インバルは4楽章を続けて指揮しましたが、何の違和感もありません。特に第1楽章から第2楽章への間で経験したことのない音色や感情の変化を感じました。第3楽章を経て終楽章の盛り上がり、都響は金管が底光りのする音色、相変わらず好調で絶妙の音色の木管、弦、打楽器。
 コンサートマスターは四方恭子氏。

 予想通り引き締まったインバルの指揮ですが、この曲の持つ憧れ、想像、絶望、力強さを見事に引き出したものでした。チャイコフスキーというと感情にどっぷりつかった演奏がありますが、自分自身はこのような演奏を好みますし、曲の本質を表出していると思います。

東京都交響楽団第874回定期演奏会Aシリーズ

東京都交響楽団第874回定期演奏会Aシリーズ
2019年3月26日  19時00分 東京文化会館
エリアフ・インバル(指揮) 東京都交響楽団
ガブリエル・リプキン(チェロ)

ブラームス:悲劇的序曲作品81
ブロッホ:ヘブライ狂詩曲《シェロモ》
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調作品47

 ブラームスはインバルらしい引き締まった演奏でしたが暖色系の色彩も。

 次いでのブロッホ、シェロモとはソロモン王のこと。リプキンとインバルが共感のこもった演奏を繰り広げます。かといって没入しすぎることなく、本質を明らかにします。知と情のバランスのとれた素晴らしい演奏でした。

 休憩時間、文化会館男性トイレはトイレ行列。20世紀の大編成の硬い曲の演奏が得意な都響ですが、この日も期待を違えませんでした。硬質の弦楽器群の統一された音色、技術音色とも楽しめる木管楽器、底光りのする金管、切れ味のいい打楽器などブラボーの一言です。
 コンサートマスターは矢部達哉氏。

 第1楽章の緊迫感、苦み走った第2楽章、常に緊張感のある第3楽章、そして終楽章の緊張を解かれたような、でも何かに引っ張られているような盛り上がり、見事でした。妙な強調のないインバルらしいいい演奏でした。でも好々爺になったのですかね。

都響スペシャル、インバル、ブルックナー

都響スペシャル
2019年3月17日  14時00分 サントリーホール
エリアフ・インバル(指揮) 東京都交響楽団

ブルックナー:交響曲第8番ハ短調WAB108(ノヴァーク第2稿、1890年版)

何というか、とんでもない名演でした。第1,2楽章は予想通りインバルらしいこだわりのない淡々とした演奏でした。第3楽章になり、輪郭のはっきりした線の中に永遠を見るような響きが・・・。モヤーとしたものでなく、楷書が融合してその結果キリスト教でもない、全く現実に即したものでない永遠を感じました。終楽章は剛速球といっても荒っぽくない、緻密で感情に溺れない大きな建築物を見るようです。

 終演後はこんなブラボーや拍手を見たことがない盛り上がり。こんなにたくさんの人が(たぶん5割程度)楽員が引き上げた後でも拍手、そしてソロカーテンコール2回、2回目はコンサートマスターの山本友重氏も。
都響の弦、特にビオラ、相変わらず木管の緻密で魅力的な音色、金管も壮大な盛り上がり。トランペットの音色いいですね。

 ただこのような演奏でも私自身心身(特に心)の調子が悪く、いい演奏、大きな建築物について行けなかったのは残念です。

東京都交響楽団第872回定期演奏会Aシリーズ

東京都交響楽団第872回定期演奏会Aシリーズ
2019年1月15日  19時00分 東京文化会館
大野和士(指揮) 東京都交響楽団
イアン・ボストリッジ(テノール)

ブゾーニ:喜劇序曲作品38
マーラー:《少年の不思議な角笛》より
プロコフィエフ:交響曲第6番変ホ短調作品111

 遠方のしかも遠方の出張で前半は聴けず残念。休憩時間に入り何とかセーフ。信号が青なら改札より10秒の文化会館は便利です。

 頭を空にしてプロコフィエフ、第1楽章のたぶん金管の不思議な対話、一見明るい第2楽章、そして回転するような第3楽章、快適ですが陰性の感情、そしてバシッとした終結。解りやすいプロコフィエフでした。

 大野は気合がありながら整った演奏で明解でした。鋭い弦楽器、相変わらず好調な木管、打楽器。
 コンサートマスターは矢部達哉氏。

 早いもので今年度は定期演奏会Aシリーズも後1回で終了です。

東京都交響楽団第871回定期演奏会Bシリーズ

東京都交響楽団第871回定期演奏会Bシリーズ
2019年1月10日  19時00分 サントリーホール
大野和士(指揮) 東京都交響楽団
パトリツィア・コバチンスカヤ(ヴァイオリン)

シェーンベルク:ヴァイオリン協奏曲作品36
ブルックナー:交響曲第6番イ長調WAB.106(ノヴァーク版)


 忙しい一日でした。久々のサントリーホール近辺、活気があります。

 コバチンスカヤは曲に没頭し当然ですが自分のものとしています。繊細な音色と卓越した技術で難解なこの曲を明快に演奏しました。時にオーケストラの方を向いて、例えば強奏の時一緒に腕を振ったりなど。都響の鋭く繊細な弦がさえました。いい演奏でした。

 後半のブルックナー。今回はブルックナーの田園かという演奏でした。第1楽章の冒頭なぜか一昔前の冒険映画のような響き、そして美しい第二楽章、明るい弦の響き、繊細な木管楽器が楽しめました。力強い第3楽章スケルツォ、終楽章はブルックナーらしい盛り上がり、久々に音の割れない重厚な金管、打楽器もいいです。
コンサートマスターは山本友重氏。

 このような演奏の場合、ブルックナーらしくないなどの感想もあるでしょうが、スポーツのように黒白がつかない音楽では、新しい側面も聴けて楽しいことです。
 P席は空きも。

都響スペシャル「第九」

都響スペシャル「第九」
2018年12月24日  14時00分 東京芸術劇場
小泉和裕(指揮) 東京都交響楽団
安井陽子(ソプラノ)
富岡明子(メゾソプラノ)
福井敬(テノール)
甲斐栄次郎(バリトン)
二期会合唱団
増田宏明(合唱指揮)

ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調作品125《合唱付》

 淡々と日常の中を歩むベートーヴェン、そんなことを考えながら芸術劇場へ向かいました。
いつもにように何気なく演奏は進んでいきます。木管が相変わらず美しい音色と優れた技術で魅了し、その中で新しい発見があり音楽に引き込まれて行きます。第3楽章も淡々と進みますがその流れで美しい瞬間に出会います。そして終楽章、一気に拡がる感じですが決して力づくでも恣意的でもなく自然な流れで盛り上がります。やや鋭い青白い炎のような弦楽器がさえ、合唱も美しいハーモニーと適切な音量で怒号しません。4人のソリストもバランスのとれたいい独唱でした。
 コンサートマスターは矢部達哉氏。

 小泉の指揮、以前はいい意味で職人的でしたが、最近スケール感が加わったような気がします。派手ではなくとも味わい深い安心できる演奏に品のいい淡い光が差し込んでいます。

 自分にとり今年最後のコンサート、柔らかい冬の日を感じつつ池袋駅で電車待ち、いい気持ちで来年につながります。

東京都交響楽団第870回定期演奏会Aシリーズ

東京都交響楽団第870回定期演奏会Aシリーズ
2018年12月19日  19時00分 東京文化会館
アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団
ターニャ・テツラフ(チェロ)
鈴木学(ヴィオラ)

R.シュトラウス:交響詩《ドン・キホーテ》作品35
ビゼー:《カルメン》組曲より(アラン・ギルバート セレクション)
    前奏曲(闘牛士)、第1幕への序奏、アルゴネーズ、ハバネラ、闘牛士の歌、間
奏曲、密輸入者の行進、ジプシーの踊り
リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲作品34

 例により遠方から。前半は聴けず、東北新幹線内でイライラ、前半終了前に到着しました。
軽い夕食(サンドイッチ)を摂りいざ後半へ。

 カルメン組曲は上記の8曲、アラン・ギルバートはオペラ風、スペイン風というよりシンフォニックに重厚に演奏してゆきます。フルート(柳原氏)の品のいい音色とサラリとした表現、トランペット(高橋氏)の表情豊かなソロ始め都響の管楽器が生きます。弦、木管も含め豊かな表現力と重厚な音色、見事でした。私のような楽器を奏でたり、オーケストラに所属したことがない者にとっては管楽器や打楽器に耳を澄ませることで、今までの印象を変える発見があります。

 最後のスペイン奇想曲も各パート、特に木管の名技が冴えわたり終盤の盛り上がり、満足しました。
 コンサートマスターは四方恭子氏。

ダニエル・ハーディング指揮パリ管弦楽団

ダニエル・ハーディング指揮パリ管弦楽団
    東京芸術劇場海外オーケストラシリーズ
2018年12月16日  15時00分 東京芸術劇場
ダニエル・ハーディング (指揮) パリ管弦楽団
イザベル・ファウスト(ヴァイオリン)

ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」
マ―ラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」

久々の海外オーケストラ。たぶんプラッソンとパリ管以来です。やはりパリ管の制服?はかっこいいです。ステージに登場するやそれだけでパリ管です。そして札幌で骨折したハーディング、座って指揮すると招聘元の説明。
 前半のヴァイオリン協奏曲、第一楽章のアンダンテ、静かな曲想をヴァイオリンが淡々と演奏します。第二楽章も充分に曲の本質を描きます。何げない演奏ながら客観的で技巧云々を超えたイザベル・ファウスト。
やはりパリ管弦楽団、柔らかな夢見るような各パートの音色、何かそれぞれ人の声の様です。

 後半のマーラーはその特色が生かされていました。ハーディングの指揮は新日フィル時代から人の声の様だと思っていましたが、今日も同様です。特に木管、金管がフランス語で話しているよう、一つの部分が生き生きとなります。第三楽章のコントラバスのソロ、余裕ありでお見事、こんな柔らかい透明な音色が出せるのかと思うトランペット、ホルン、歯切れよく演奏姿がかっこいい打楽器、思っていたパリ管弦楽団そのものでした。そして終楽章終盤の盛り上がり!

 ハーディングは協奏曲では椅子にしっかり腰かけていましたが、マーラーでは骨折した右側にも重心を寄せ大丈夫かなと思うほど力が入っていました。盛大な拍手、スタンディングオベーションも何人か。


 アンコールはエルガーのニムロッド、共感のこもった演奏でした。

東京都交響楽団第868回定期演奏会Bシリーズ

東京都交響楽団第868回定期演奏会Bシリーズ
2018年12月10日  19時00分 サントリーホール
アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団

メンデルスゾーン:序曲《フィンガルの洞窟》作品26
シューマン:交響曲第1番変ロ長調作品38《春》
ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》

 今シーズン最も期待していた演奏会、遠方からだと間に合わないのでわざわざ有休休暇。ただ睡眠不足で少しボーとしています。開演のアナウンスがあり楽員がステージに登場するまでの客席の緊張感、アラン・ギルバートの時は強く感じます。
 最初のフィンガルの洞窟、予想通り重厚な表現で、描写的という訳ではありません。真正面から向き合ったいい演奏でした。
 次いでのシューマン、この曲の実演は久しぶりでしょう。第1楽章の力強い解放感と生命の息吹きから始まり、都響の好調の木管が活躍し初めて聴くように細部が楽しめました。途中ブラームスに影響したなと思われる旋律も。終楽章は終盤ギルバートらしい盛り上がりです。フルートの柳原氏、オーボエ鷹巣氏に盛大な拍手。

 ギルバートがニューヨーク生まれ、ニューヨークフィル音楽監督だったということを考えるとギルバートの指揮からはニューヨークの正当派で重厚な雰囲気が感じられます。ニューヨークへは行ったこともないのですがたぶんそうなんでしょう。今日の都響も重厚な弦楽器、個々の名技が素晴らしい木管、金管も活躍、打楽器の歯切れの良さ。
 コンサートマスターは矢部達哉氏。

 後半は春の祭典、最初のファゴット岡本氏のソロからこれは名演と。木管を生かしその名技に注目すると今まで気がつかなかった細部まで浮き上がります。音で聴いた演奏より目の前の演奏、ああこんな箇所があったのかと。弦楽器の落ち着いた響き、第1部終盤の凄まじい盛り上がり。第2部はしばらくは重苦しい雰囲気ですが、大団円で盛り上げります。

 期待以上の演奏でした。あれこれ注文する人もいるでしょうが私は今日の演奏で大満足、今年最後のサントリーホールでした。

東京都交響楽団第867 回定期演奏会Aシリーズ

東京都交響楽団第867 回定期演奏会Aシリーズ
2018年11月21日  19時00分 東京文化会館
ミヒャエル・ザンデルリンク (指揮) 東京都交響楽団
河村尚子(ピアノ)

ワイル:交響曲第2番
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第1番変二長調作品10
ショスタコーヴィチ:交響曲第6番ロ短調作品54

 初めて聴くミヒャエル・ザンデルリンクです。ステージに登場した瞬間悪くなさそうだ、という印象。指揮姿が洗練されています。ピアノやその他の楽器の出身者は何となくぎこちないのですが、例えばアシュケナージ、上半身だけが動いて音楽と合っていません。そんな懸念を吹き飛ばしました。

 ワイル作品、初演はブルーノ・ワルターです。古典的なようで随所にワイルならではの粋が隠し味のように聴こえますが、ミヒャエル・ザンデルリンクは刻銘に曲の美しさを表出し本質を目指します。都響もよく応え、特にトランペット、トロンボーンが魅力的でした。

 プロコフィエフは河村のシャキッとした演奏で引き締まります。集中力の高い見事な演奏でした。アンコールは同じ作曲者の10の小品よりNo.7前奏曲でした。
後半のショスタコーヴィチ、めったに聴けない第6番です。井上道義氏の解説を電車の中で読んでいましたが、

 ショスタコーヴィチを初めて聴くならこの曲、ということが書かれていました。ショスタコーヴィチの交響曲の裏の意味を考えることなく聴きましたが、第1楽章のラルゴの弦、フルート、第2楽章では躍動し終楽章では諧謔的で空盛り上がりのような曲想、なるほどショスタコーヴィチと納得しました。ミヒャエル・ザンデルリンクと都響は繊細にこの曲の特質を浮かび上がらせていました。都響も全パート、特に木管が相変わらず魅力的でし、金管、打楽器、そして弦も繊細です。

 コンサートマスターは山本友重氏。
 ミヒャエル・ザンデルリンク、渋いいい指揮者です。

東京フィルハーモニー交響楽団第913回オーチャード定期演奏会

東京フィルハーモニー交響楽団第913回オーチャード定期演奏会
2018年11月18日  15時00分 オーチャードホール
アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
メフィストーフェレ:マルコ・スポッティ(バス)
ファウスト:アントネッロ・パロンビ(テノール)
マルゲリータ/エレーナ:マリア・テレーザ・レーヴァ(ソプラノ)
マルタ/パンターリス:清水華澄(メゾ・ソプラノ)
ヴァクネル/ネレーオ:与儀巧(テノール)
合唱:新国立劇場合唱団(指揮:冨平恭平)
児童合唱:世田谷ジュニア合唱団(指揮:掛江みどり)
助演:古賀豊

ボーイト:歌劇「メフィストーフェレ」

 頭は疲れで乾燥したような状態、でも何とか聴きました。ドイツのオペラのようなイタリアオペラでした。ゲーテのファウストが原作であるということもあるのでしょうが。ワーグナー風のところもあればロッシーニも顔を出します。

 相変わらずバッティストーニの劇性と抒情性のある見事な指揮でした。歌手陣もそれぞれ役どころをこなし文句
のない出来でした。新国立劇場合唱団も美しい統一されたハーモニー、特に女声の繊細さ。

 演奏会形式で演技と舞台奥に映される情景に合った絵は無難でしたが、時に光る稲妻のような照明は効果的とは思えません。灰色の修道士と鬼火が客席から登場します。

 東京フィルはバッティストーニの指揮に応え、特質を生かした演奏でした。
コンサートマスターは依田真宜氏。

 登場人物も少なく演奏会形式にピッタリかと思いますが、このオペラに関しては舞台で行った方が解りやすそう。
 凝縮された忍耐の日曜日の午後でした。