METライヴビューイング「ヴォツェック」

METライヴビューイング「ヴォツェック」
ベルク:歌劇「ヴォツェック」
2020年3月        

ヴォツェック:ペーター・マッティ
マリー:エルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァー
鼓手長:クリストファー・ヴェントリス
大尉:ゲルハルト・ジーゲル
医者:クリスチャン・ヴァン・ホーン

ヤニック・ネゼ=セガン(指揮)
メトロポリタン歌劇場管弦楽団
同合唱団
ウィリアム・ケントリッジ(演出)

なんといってもヤニック・ネゼ=セガンとオーケストラ、表情豊かで繊細、この曲の魅力をを細部まで紡ぎだします。見事な響きです。
ペーター・マッティは何を言っているのか、何を考えているのか解らないヴォツェックになりきりの見事な歌唱と演技です。声も柔らかくて張りもあります。マリーのエルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァーも同様です。クリストファー・ヴェントリスの横柄な鼓手長、その他の役も存在感を出します。

という訳で指揮者、オーケストラ、歌手も見事なのですが、演出が凝りすぎで、ただでさえ解り難いこのオペラをさらに混迷にしたというところです。全幕を通して舞台手前は日常生活の備品などがあり各場によって入れ替わります。後壁は昔風の映像が映し出されます。そして階段や物置小屋風の一室も。それはいいのですがさらに解り難くした舞台です。熟知した聞き手には面白いのかもしれませんが。

東京二期会オペラ劇場「椿姫」

東京二期会オペラ劇場「椿姫」
2020年2月23日  14時00分 東京文化会館
ジャコモ・サグリパンティ(指揮)   東京都交響楽団
ヴィオレッタ:谷原めぐみ
フローラ:藤井麻美
アンニーナ:磯地美樹
アルフレード:樋口達哉
ジェルモン:成田博之
ガストン:下村将太
ドゥフォール:米谷毅彦
ドビニー:伊藤純
グランヴィル:峰茂樹
ジュゼッペ:吉見佳晃
仲介人:香月健
ダンサー:千葉さなえ、玲実くれあ、輝生かなで、栗原寧々、鈴木萌恵
     岡崎大樹、上垣内平、宮澤良輔、谷森雄次、岩下貴史
合唱:二期会合唱団(指揮:佐藤宏)
演出:原田諒
装置:松井るみ
衣装:前田文子 照明:喜多村貴 振付:麻咲梨乃
演出助手:菊池裕美子 舞台監督:村田健輔 公演監督:大野徹也

ヴェルディ:歌劇「椿姫」

マスクをしている観客が7-8割、ひょっとしたら予防のため欠席者も,と思いましたが、中央よりの席は埋まっており、通常の入りです。
いい演奏でしたが、まずはサグリパンティと都響です。細かい情景や感情を表現し、この曲の特質を見事に表現していました。繊細な弦、管など。サグリパンティは洗練され、恣意的な表現がなく曲の良さを導き出す本当にいい指揮者です。
谷原めぐみは私たちが想像するヴィオレッタを明るく張りのある歌声で演じます。アルフレードの樋口達哉も堅実でした。ただジェルモンの成田博之は含んだような声で、私が思い浮かべるジェルモンとは少し違います。

演出と舞台ですが椿の花弁を模した構造物が舞台に置かれ、幕が進むにつれしぼんで行きますが、解説を読むまで解りません。花弁の中に机、いす、ベッド、ダンサーの踊り場など。

背景は投影された星空など。
凝った演出でなく、歌手たちも様々な動作に気を使うことなく直接に音楽の良さを味わえます。一方では正統派の主役3人の歌唱を生かすような演出もあったのかと思います。

東京都交響楽団第896回定期演奏会Aシリーズ

東京都交響楽団第896回定期演奏会Aシリーズ 
2020年2月3日  19時00分   東京文化会館
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮) 東京都交響楽団
栗友会合唱団

ラモー:オペラ=バレ《優雅なインドの国々》組曲
ルベル:バレエ音楽《四大元素》
ラヴェル:バレエ音楽《ダフニスとクロエ》全曲

今日はフランスのバレエ音楽、バロックと印象派という思いもかけない発想。
まずはラモー、ロトは歯切れのいいリズで音楽を進め、都響も明るくくっきりした音で応えます。第2曲「第1&第2リゴードン」、第3曲「第1&第2タンブーラン」、第4曲「未開人たちの踊り」でのテナードラム、フィンガーシンバル、タンブリン、スレイベルの品のいい想像上の土俗性楽しいものです。そしてあの楽器はフィンガーシンバルの集合体?

次いでルベルです。第1曲「カオス」の不協和音が有名ですが、続く曲で土、火、水、空気の四大元素を思い浮かべます。どの曲か符号できませんが、途中でオーボエ、ファゴット、第1第2ヴァイオリンが立って演奏し、視覚的な楽しさもあり、弦楽器や管楽器の明るい音色を隅々まで楽しめました。

後半のラヴェル、精密な演奏で都響の技術が生きます。肩に力を入れる訳でなく、描写的でもない、モヤーとしたフランス風でもない新しい響きの「ダフニスとクロエ」でした。楽譜が全て見えるような、そして一音一音が生きていて活気のある演奏です。第1部冒頭の弱音からして惹かれます。描写的ではありませんが、舞台でのバレエが見えてくるような、何とも形容しがたい不思議な魅力に満ちた演奏です。第2部は爽やかで柔らかさのある栗友会合唱団の声で始まります。同じように内容が浮かび上がってくるようで、そして第3部へ、今日の演奏では夜明けの音が色彩を帯び、パントマイム、全員の踊りへと。没我的でない青白い炎のような終盤です。
都響は対向編成で、やや硬質で繊細なガラス細工のような弦の音色、フルートの柳原氏を始め繊細な管楽器、歯切れいい打楽器、いつもより更に驚くワッというような演奏でした。
コンサートマスターは矢部達哉氏。

ロトは才気あふれますが、鼻につかず何事もないように淡々と作曲家たちの才能を引き出し見事としか言いようがありません。ソロカーテンコール1回。
何回も都響の演奏を聴きましたが、ベスト5に入る演奏でした。

第17回ヘンデル・フェスティバル・ジャパン「ヨシュア」

第17回ヘンデル・フェスティバル・ジャパン「ヨシュア」
2020年1月25日   15時30分      浜離宮朝日ホール
三澤寿喜(指揮)キャノンズコンサート室内合唱団、管弦楽団
ヨシュア(イスラエルの指導者):辻裕久(テノール)
アクサ(カレブの娘、オトニエルの恋人):広瀬奈緒(ソプラノ)
オトニエル(若き指揮官):波多野睦美(メゾソプラノ)
カレブ(族長):牧野正人(バス)
天使:前田ヒロミツ(テノール)
コンサートマスター:川久保洋子
首席チェロ:懸田貴嗣
オルガン独奏:森亮子

ヘンデル:オラトリオ「ヨシュア」HMV64

実演で初めて全曲聴くヘンデルのオラトリオ、ストーリーはよくあるパターンで解りやすいものです。
各歌手もそれぞれの役割を十全に歌い、声も表現も見事なものでした。また合唱の均質な柔らかい声も今まで聞いたことのない美しさでした。
オーケストラも明るく張りがあり、ヘンデルの曲の構造を楽しめ、三澤の指揮も曲の良さを表現する見事なものでした。

曲はヘンデルの明るさ、おおらかさはもちろん、おそらく後に影響する見事なオーケストレーションや旋律、なるほど立派な曲です。とはいうものの曲の起伏が少なく、退屈した場面もありました。一方で当時の人々は呼吸の間隔が長い、ゆっくりした日常だったのだと思います。
第3幕の「見よ、勇者は還る」、表彰式などでは重厚に演奏されますが、ここでは明るくテンポも速いのが印象的です。

東京都交響楽団第895回定期演奏会Bシリーズ 

東京都交響楽団第895回定期演奏会Bシリーズ 
2020年1月16日  19時00分   サントリーホール
マーティン・ブラビンズ(指揮) 東京都交響楽団
ヨルゲン・ファン・ライエン(トロンボーン)

ラヴェル:クープランの墓
マクミラン:トロンボーン協奏曲(2016)日本初演
エルガー:エニグマ変奏曲作品36

勤務地が遠方でラヴェルには間に合わず、残念でした。本日の演奏会は「愛する人々に捧ぐ」という俗っぽい副題で?、でしたが、身近な人々への思いを込めた作品集とわかって納得した次第です。そういえば12月のA定期もアデスのクープランからの3つの習作でした。

マクミラン、いわゆるポストモダン的、聴きやすい曲で、冒頭の弦楽器の中庸の美しさのある弦の響き、終盤の独奏トロンボーンとオーケストラのトロンボーン奏者3人の掛け合いが印象的で、人々の対話のようです。ヨルゲン・ファン・ライエンはトロンボーンを自在に吹きまるで自分の体の一部です。アンコールはアルヴォ・ペルトのVater Unserという曲で独奏トロンボーンと弦楽四重奏のソロ(矢部、双紙、店村、古川各氏)の演奏で抒情的で美しい演奏でした。

後半はエルガー、相変わらず中庸の美しさにあふれた都響の弦と美しい音色の管楽器です。第1変奏「C.AE.」から私たちの想像する品のいいイギリスです。中庸の音色の弦の音魅せられます。第3変奏「R.B.T.」、第4変奏「R.P.A.」も品よく描写します。第7変奏「Troyte」のティンパニの切れ味、第9変奏「Nimrod」の落ち着いた味、抒情的な第13変奏の「***」、そして第14変奏「E.D.U.」の落ち着いた盛り上がり。
ブラビンズは大切な人や友人たちを感情に溺れすぎず、また突き放すこともなく適度な距離感を持ってエルガーの曲を指揮しました。
繊細で弱音の美しいヴァイオリン、統一された音色のヴィオラ、そしてこの日は柔らかくしかも張りのあるチェロが見事でした。いつもながら音色ややりとりの美しい木管。
コンサートマスターは矢部達哉氏。

ロイヤルオペラハウスシネマシーズン2019/20「ドン・パスクワーレ」

ロイヤルオペラハウスシネマシーズン2019/20「ドン・パスクワーレ」
ドニゼッティ:歌劇「ドン・パスクワーレ」
2020年1月12日10時        TOHOシネマズシャンテ
ドン・パスクワーレ:ブリン・ターフェル
ノリーナ:オルガ・ペレチャッコ
エルネスト:イオアン・ホテア
マラテスタ:マルクス・ヴェルバ

エヴェリーノ・ピド(指揮)
コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団
同合唱団
ダミアーノ・ミキエレット(演出)

久しぶりのオペラのライブビューイング、しかも久しぶりのTOHOシネマズシャンテ、人も少なく暗い空間で集中できる心地よさ。生のコンサートのような制約もなくゆったりできます。

ミキエレットの演出は洗練されわかりやすいもの。舞台は現代に移り、スマホも登場し、歌手の舞台での映像を奥のスクリーンに映し出すなどなど。ドン・パスクワーレの家は古い家具や台所、年代物の車など古いものを愛する主人公の性格を表現し、家は屋根、煙突など縁のみで描かれます。しかも幼小児期の母親との思い出の場面も登場します。この舞台を基礎にノリーナの映画撮影現場の助手らしき仕事の場面、密会の場面、ドン・パスクワーレの家の大幅なリニューアルの場面が登場します。このような演出でなければおおよそ荒唐無稽なこのオペラのストーリーがわかりません。

歌手陣はドン・パスクワーレのとぼけた味を見事に歌うブリン・ターフェル、見かけの純真さと専制君主的な女性を描き分けたすっきりして力強い美声のオルガ・ペレチャッコ、気弱なエルネストを歌うイオアン・ホテア、知恵を働かせ画策するマラテスタ役のマルクス・ヴェルバ、いすれも素晴らしい歌唱です。

指揮のドニゼッティのスペシャリスト、エヴェリーノ・ピドも地味ですが、歌唱を見事に支えていました。そして堅実なオーケストラ。
メトも含め今後が楽しみです。

都響スペシャル「第九」

都響スペシャル「第九」 
2019年12月25日  19時00分   東京文化会館
レオシュ・スワロフスキー(指揮) 東京都交響楽団
安井陽子(ソプラノ)
富岡明子(メゾソプラノ)
福井敬(テノール)
甲斐栄次郎(バリトン)
二期会合唱団

ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調作品95《合唱付》

今年最後の演奏会。
初めて見るレオシュ・スワロフスキーですが、たぶん血縁関係のないハンス・スワロフスキーをいつも思い出します。思ったより大柄で、腕を左右に大きく動かすなど意外です。
16-14-12-10-8の編成で、木管楽器も倍。伝統的な期待通りの第九でした。第1楽章は輪郭が明瞭な感じ、第2、第3楽章も神秘的にならず淡々と進みます。渋い音色の弦楽器と管楽器、打楽器の対話が美しく細かい箇所まで聴きとれました。終楽章は独唱が4人とも渋めの伝統的指揮に合った歌唱で、合唱も美しい音を響かせます。
コンサートマスターは矢部達哉氏。
レオシュ・スワロフスキーは何の変哲もない、しかし安心して聴ける日常の第九、日常の喧騒や煩わしさを癒してくれるいつもの我が家といった貴重な演奏でした。

アラン・ギルバートと都響メンバーによる弦楽五重奏

アラン・ギルバートと都響メンバーによる弦楽五重奏 
2019年12月15日  19時00分   浜離宮朝日ホール
矢部達哉、四方恭子(ヴァイオリン)
アラン・ギルバート、鈴木学(ヴィオラ) 
古川展生(チェロ)

モーツアルト:弦楽五重奏曲第3番ハ長調K.515
ドヴォルザーク:弦楽五重奏曲第3番変ホ長調作品97

アラン・ギルバートのヴィオラを聴きたい、ということで浜離宮朝日ホールへ。自分にとって他流試合のようなもので、やはりいつもの都響とお客さんが違います。何というか、室内楽、といった顔立ちです。

最初のモーツアルト、きりっとした品のいいモーツアルトで、都響のメンバーたちも甘いケーキのようなトロッとした演奏ではありません。

後半のドヴォルザーク、ギルバートの分厚い音色のヴィオラが冒頭に表れ、新世界交響曲を思わせる瞬間も。またボヘミアと日本の音楽の共通性も感じました。各パートの活気ある演奏が融合し昇華されいい演奏でした。
矢部、四方、鈴木、古川各氏ともなるほど、今の都響のしっかりした基礎の中心的役割を担っていると改めて感じた次第です。


都響スペシャル「マーラー6番」 

都響スペシャル「マーラー6番」 
2019年12月14日  14時00分   サントリーホール
アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団

マーラー:交響曲第6番イ短調《悲劇的》


実演は初めて、CDなどでも久しぶりの6番ですが、改めて交響曲史上まれに見る名曲と痛感しました。
第1楽章は行進曲風に進みますが、強制的に行わされている何か後年のショスタコーヴィチ的。各パートがくっきり浮かび上がります。第2楽章アンダンテ・モデラートはカウベルが長閑な景色を思わせ、今までに聴いたことのない抒情的な旋律が流れます。都響の弦が厚さを感じさせない分厚い音を奏でます。
第3楽章スケルツォ/重々しくは淡々と進み、終楽章ではマーラーは悩み、葛藤しそして安堵へと、ところがハンマーがそれを断ち切ります。人生は悩み、方向を模索しますが、突如の出来事で遮断されます。安寧の境地でなく、特に第9番のような静かにあの世に旅立つ訳でなく突然に。6番はマーラーの厳しい人生観です。
ギルバートはバーンスタインとワルターの影響が感じられる暖かく、そして破目をはずさない激情でこの曲を充分に表現します。
都響も分厚い弦、魅力的な音色の木管、安定した金管、切れ味鋭い打楽器で応えます。
コンサートマスターは矢部達哉氏。

東京都交響楽団第892回定期演奏会Cシリーズ 

東京都交響楽団第892回定期演奏会Cシリーズ 
2019年12月8日  14時00分   東京芸術劇場
アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団
矢部達哉(ヴァイオリン)

リスト(アダムズ編曲):悲しみのゴンドラ
バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番Sz.36
アデス:クープランからの3つの習作(2006)日本初演
ハイドン:交響曲第90番ハ長調Hob.190

開始前から電子音?が会場に・・・。、しかし1曲目後で何とか解決。
最初は気にしていたギルバートですが、悲しみのゴンドラは分厚い弦の音で後期ロマン派の世界へ。解説書によるとミニマリズムとロマン派の接点とありますが、私の勉強不足でそこまでは解りません。次いではヴァイオリン協奏曲、矢部の洗練されたヴァイオリンで充分曲の良さを理解できる演奏でした。第1楽章は夢見るような表情や懐かしい響き、第2楽章の技巧、また木管楽器と独奏ヴァイオリンの旋律の掛け合い、見事でした。

後半のアデスは初めて聴きます。小編成の弦5部が二つ、クープランが現代人ならこのような響きになったろうと思わせる曲です。繊細な弦が違和感なく表現し、見事な演奏でした。最後のハイドンは正面から向かった堂々とした演奏で終楽章はハイドンの端正な表情から熱のある勢いが出てきます。そして終結部でのギルバートと都響のやりとり、ギルバートの得意そうな表情。

今日は第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリン、そしてコントラバスの配置で重厚で暖かい響きと管楽器の美しい音、特にフルート、オーボエ、ホルンが魅力的でした。コンサートマスターは四方恭子氏。

北とぴあ国際音楽祭2019ヘンデル作曲オペラ「リナルド」

北とぴあ国際音楽祭2019ヘンデル作曲オペラ「リナルド」
2019年12月1日   14時      北とぴあさくらホール
寺神戸亮(指揮、ヴァイオリン)レ・ボレアード
リナルド:クリント・ファン・デア・リンデ(カウンターテナー)
アルミレーナ:フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ(ソプラノ)
アルミーダ:湯川亜也子(メゾソプラノ)
アルガンテ:フルヴィオ・ベッティーニ(バリトン)
ゴッフレード:布施奈緒子(メゾソプラノ)
エウスターツィオ:中嶋俊晴(カウンターテナー)
魔法使い/使者:ヨナタン・ド・クースター(カウンターテナー)
シレーネ:澤江衣里(ソプラノ)
シレーネ:望月万利亜(ソプラノ)
打越麗子(助演)加藤典子(助演)敷地理(助演)
演出:佐藤美晴

ヘンデル:歌劇「リナルド」

久々の古楽シリーズ。しかも北とぴあは初めて、王子駅からは近いが、ホールはやや古くく席の幅も狭い。3時間持つかなといところでしたが・・・。

演出は第1幕開始前に下手から薄手のコートとカバン、傘?を持った男(たぶん魔法使い役)が現れリナルドと言って舞台の幕を差すところから始まります。蚊帳のようなものの中にオーケストラがあり、進行するとそれも開くという訳です。オーケストラは舞台上一段高く置かれ、後方は額が左横方向に倒れており、しかもガラス?の破片あり。それとは別に舞台にも小さい額が使われ、行き場のない登場人物を囲ったり、アルミレーナとアルミーダのお互い分身としての共通項としての窓の役も担います。しかし全体を通して意味するところはよく解りません。そして助演の3人が大活躍、リナルドたちの味方やアルミーダの手下になったり休む間がありませんが、洗練された動きで舞台を盛り上げていました。第3幕は冒頭の傘がアルミナーレの救出に役立ちますが、これも関連は解りません。しかし一貫した流れがあり、また登場人物の演技も細やかであっさりしたいい演出だったと思います。

歌手陣は歌唱、演技とも洗練され素晴らしいものでした。特にアルミレーナのフランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリは軽くハリのある声で役を演じ、リナルドのクリント・ファン・デア・リンデも同様で、アルミーダの湯川亜也子も役の特質を表現していました。寺神戸亮指揮のレ・ボレアードも美しいいい演奏だっとと思います。特に木管楽器の旋律の美しさは特筆すべきものです。私にとっては久々の古楽シリーズ復活、今後も細々と続けるつもりです。

トリトン晴れた海のオーケストラ第7回ベートーヴェンチクルスⅣ

トリトン晴れた海のオーケストラ第7回ベートーヴェンチクルスⅣ
2019年11月30日   14時      第一生命ホール
矢部達哉(コンサートマスター)トリトン晴れた海のオーケストラ

ベートーヴェン:交響曲第6番へ長調作品68「田園」
ベートーヴェン:交響曲第8番ヘ長調作品93
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第16番ヘ長調作品135より第3楽章(弦楽合奏版)
        (アンコール)

初めての第一生命ホール、JR新橋駅、都営大江戸線勝どき駅で少し迷う。到着すると普通の建物じゃないですか。
前々回?はチケットを買っておきながら気分不良で、とても外へ出る気にもならず欠席。以後の評判を聞いて悔しい思いでした。やっと本日。
最初の田園、実演は久しぶりですが、冒頭からすっかり音に酔いました。もちろん陶酔的という訳でなく、質のいい銀器のような弦、ほれぼれする管楽器や打楽器。大きな編成では大編成では聴こえない音も聴こえます。


さらに8番では曲の快活さと、オーケストラの特質がピッタリです。快い興奮でした。
アンコールの弦楽四重奏曲第16番からの第3楽章、最晩年のベートーヴェンの琴線に久々に触れました。
今日の晴天のような気持ちのいい演奏会でした。

東京都交響楽団プロムナードコンサートNo.384

東京都交響楽団プロムナードコンサートNo.384
2019年11月23日  14時00分   サントリーホール
エリアフ・インバル(指揮) 東京都交響楽団
サスキア・ジョルジーニ(ピアノ)

ショスタコーヴィチ:祝典序曲作品96
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲作品43
チャイコフスキー:幻想序曲《ロメオとジュリエット》
チャイコフスキー:祝典序曲《1812年》作品49

2つの祝典序曲に囲まれたプログラム。最初のショスタコーヴィチはプログラムに書いてある通り、ルスランとリュドミラの20世紀版のよう。何の詮索もなく聴いていてワクワクする曲です。次いでラフマニノフ、サスキア・ジョルジーニは硬い音色で楷書風に進めます。ということでオーケストラの一楽器といった趣きです。ハリウッドの映画というより、ヨーロッパ映画の細やかな描写のような演奏でした。アンコールのプーランク、愛の小径FP106は透明な感覚にあふれていました。それにしても都響の弦、木管、金管、打楽器の魅力的な合奏。

後半まずはチャイコフスキー、絵を描くように描写的でなく、またロマンたっぷりでなく過度な情感を取ってしまった演奏で、やや暗い硬質の弦と精妙な管楽器が見事です。

最後は1905年、1912年、1812年の年代付き作品の一つ1812年です。予想されたように都響の特質満開です。インバルは淡々とした演奏で進め、終盤の盛り上がり打楽器の立体的な響き、バンダの効果は見事でした。コンサートマスターは四方恭子氏。

東京都交響楽団第891回定期演奏会Cシリーズ 

東京都交響楽団第891回定期演奏会Cシリーズ 
2019年11月16日  14時00分   東京芸術劇場
エリアフ・インバル(指揮) 東京都交響楽団
ヨゼフ・シュパチェク(ヴァイオリン)


ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調作品77
ショスタコーヴィチ:交響曲第12番ニ短調作品112《1917年》

ショスタコーヴイチのヴァイオリン協奏曲、シュパチェクのヴァイオリンは全楽章を通じて緊張や狂騒、抑うつを強要することはありません。質のいい銀器のような音色で、技巧をひけらかさない演奏です。銀のフォトフレームにショスタコーヴイチの渋面が見えてきそうです。
アンコールのイザイ無伴奏ヴァイオリンソナタ作品27第5番より第2楽章「田舎の踊り」も同じ傾向で技巧と曲が融合した見事な演奏でした。
交響曲第12番、どう考えてもソ連賛美の演奏ではありません。各楽章に標題ついてますが、描写的でなく抽象的な、インバルの指揮です。やや暗く落ち着いた東京都交響楽団の弦、魅力的な音色と合奏の管楽器、鋭くきまる打楽器。
コンサートマスターは山本友重氏
11番の演奏ほど緊迫感はありませんが、心にそこはかとなく響く演奏でした。ソロカーテンコール一回。

東京都交響楽団第890回定期演奏会Aシリーズ 

東京都交響楽団第890回定期演奏会Aシリーズ 
2019年11月11日  19時00分   東京文化会館
エリアフ・インバル(指揮) 東京都交響楽団

チャイコフスキー:幻想曲《フランチェスカ・ダ・リミニ》作品32
ショスタコーヴィチ:交響曲第11番ト短調作品103《1905年》


睡眠不足もあり頭がすっきりしません。ギリギリで文化会館へ、食事もとれずいつまでこんな生活が続くのやら。おまけに職場の雰囲気が悪い、そんな気持ちを引きずった演奏会です。
まずはフランチェスカ・ダ・リミニ、この曲はピンと来ず、また自分の気持ちもあり乗れませんでした。拍手も音圧が低い感じです。
ところが後半ショスタコーヴィチで一変。第1楽章冒頭、弦の暗く落ち着いた弦の響きに始まり暗い事件を予感させます。第2楽章は高揚した音楽の後、民衆を襲うおぞましさ、対比が見事で後半部が強調されます。第3楽章はやや暗く柔らかいヴィオラの演奏が見事でした。終演後もインバルはヴィオラパートに拍手。終楽章はショスタコーヴィチによくある強制された躍動、首を横に向けた悲しみが感じられます。この曲どう考えても権力者側への賛美でなく民衆の悲しみと思います。
全体に客観的で研ぎ澄まされたインバルの特徴が充分に出たショスタコーヴィチでした。そして表情豊かな弦、相変わらず魅力ある管楽器、そして小太鼓をはじめ切れのいい打楽器。ソロカーテンコール1回。
コンサートマスターは矢部達哉氏。
3月ではインバルの足腰も重そうで少し峠を越えたかと思いましたが、今日は足取りも軽く、以前の切れ味が復活しました。

東京都交響楽団第889回定期演奏会Bシリーズ 

東京都交響楽団第889回定期演奏会Bシリーズ 
2019年10月16日  19時00分   サントリーホール
小泉和裕(指揮) 東京都交響楽団

R.ワーグナー:ジークフリート牧歌
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調WAB107(ノヴァーク版)

勤務先遠方で例によりジークフリート牧歌は聴けませんでした。ロビーのモニターではコントラバス8の弦楽器の編成の様でした。
後半はブルックナー、いつものせりふですが、大伽藍を仰ぐ、キリスト教的な高揚感、強大なサウンドに酔いしれる、抒情的、といった演奏とはかけ離れた日常の言語で、しかも日本語で語られるブルックナーでした。

全楽章を通して淡々とした音楽で、特に大きな高揚はしません。でも第1楽章冒頭から柔らかい弦に魅入られます。第2楽章もヴィスコンティの夏の嵐(たぶん指揮はフランコ・フェラーラ!)のような抒情味たっぷりでなくあっさりと進みます。そして終楽章肩の力の抜けた、そして希望に満ちた明るい小路を進んで行くような趣き。何とも心の落ち着く演奏でした。
落ち着いた弦楽器と魅力的なアンサンブルの木管、咆哮しすぎない金管。

人によってはこのような演奏を物足りないと思うでしょうが、ギラギラしたものがもてはやされる世の中、本当に貴重な、派手さはありませんが品
のいい内面の充実した演奏でした。

演奏会当日は氏の誕生日で、花束贈呈と楽員によるハッピーバースデイの演奏がありました。ソロカーテンコール1回。
つらい日々をひととき忘れて上野東京ラインへ。

東京二期会オペラ劇場「蝶々夫人」

東京二期会オペラ劇場「蝶々夫人」
2019年10月5日  14時00分 東京文化会館
アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
蝶々夫人:森谷真理
スズキ:藤井麻美
ケート:成田伊美
ピンカートン:樋口達哉
シャープレス:黒田博
ゴロー:萩原潤
ヤマドリ:小林由樹
ボンゾ:志村文彦
神官:香月健
青年:牧田哲也
合唱:二期会合唱団(指揮:河原哲也)
演出:宮本亞門
衣装:高田賢三


プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」

相変わらずプッチーニは女性の観客が多いなと、一人の男性もいますが・・・。

誰もが気になるピンカートンと坊やのその後ですが、三十年後くらいの病床にいるピンカートンと青年になった坊や(黙役で牧田哲也)が各幕の前と終演後に登場します。ピンカートンは蝶々さんに対する行動を反省し、青年は真実を知るという前提です。

第一幕前に病床のピンカートンとケイト、医者、大きくなった坊やの場面。音楽が始まると舞台上の数重になったカーテンを出し入れし、映像
を投射、背景の映像も星の夜など美しい。新婚夫婦の住まいは東屋のような小さな一軒家で、梯子を登って二階にも行けます。これが回転し、衣装や場面の転換に活用されています。そしてほぼ全場面を大きくなった坊やが傍観しています。ある晴れた日は、蝶々さんが家の二階に上がり港を眺めながら歌うという設定。

第二幕から蝶々さんは西洋風の髪形と衣装になり、舞台は一軒家が中心に。蝶々さんがアメリカナイズされたというとことかなと思いますが、これは私の読みが浅いか。またピンカートンは松葉杖をついていました。これは戦争に参戦したとうことの様です。
終幕は一軒家の中で蝶々さん自害すると、円い窓が真っ赤に染まり、さらにピンカートンが病床で、蝶々さんとさけび生き絶え、このとき結婚式の衣装の蝶々さんとピンカートンが天国で結ばれるという設定。本当は蝶々さんを愛していたという訳です。

諦めながらも一途な蝶々さんを演じた森谷真理、輝かしい第一幕と後悔に満ちた終幕を演じた樋口達哉、いい歌唱と演技でした。スズキの藤井麻美は今まで印象と違うスズキでしたが、かえって新鮮でした。その他の歌手も持ち味を出していました。
バッティストーニ指揮は意外と冷静で、歌手を引き立て、東京フィルもオペラらしい演奏でした。

高田賢三氏の衣装は第一幕の女性たちの着物のどぎつくない配色の美しさ、第二幕以降は蝶々さんの衣装は和洋折衷ですが洗練されすんなり受け入れることができます。

解りやすい演出でいい演奏でした。

Rugby World Cup 2019 その7

Pool D
オーストラリア45-10ウルグアイ(大分スポーツ公園総合競技場)
ウルグアイは健闘していましたが、試合が終わるとこの結果。この試合のウルグアイは白いジャージで過去の試合より大きく見えます。11番Freitasの力強い走力が目を引きました。
オーストラリアは短いパスを繋ぐなど特徴を存分に出しました。

Pool D
ウェールズ29VS17フィジー(大分スポーツ公園総合競技場)
結局プレイ、試合とも面白かったのがPool D。この試合もフィジーのスピード、どこから来るのか解らないパスがグラウンドを駆け抜けました。まさにFlying Fijianです。中でもラドラドラのスピードや位置取り。一方のウェールズ防戦一方で、ペナルティトライまで取られます。しかし浮足立たず、アダムス、L.ウィリアムス、ガレス・ディヴィス、ジョナサン・ディヴィスなどのランなどで得点を重ねます。68分L.ウィリアムスのトライで勝負ありでした。
今大会屈指の好試合でした。

Pool C
フランス23VS21トンガ(熊本総合運動公園陸上競技場)
普通にプレイしていたフランスですが、気がつくとこの点差でした。トンガが徐々に本来の力を出してきたというか。あるいはフランスに前回大会の敗戦の呪縛があるのか・・・。
あわやアップセットですが、前回のフランスVSトンガ、今回の日本VSアイルランド、フィジーVSウルグアイ、あわやのウェールズVSフィジー、今回のフランスVSトンガと、力が弱いとされる方が特質を全力で出し、一方で強い方が受けてしまったという構図です。

Pool B
ニュージーランド71-9ナミビア(東京スタジアム)
ナミビアも正々堂々と全力を出すが、力の差は何とも・・・。トライを重ねるニュージーランドにかつての日本戦を思い出しましたが、それほどまで大差なし。ニュージーランドはグラウンド全面に展開するラグビーです。手を抜きません。
ナミビアもチャンスはあったのですが、ニュージーランドの隙の無いディフェンスを突破できません。

東京都交響楽団第888回定期演奏会Aシリーズ 

東京都交響楽団第888回定期演奏会Aシリーズ 
2019年10月7日  19時00分   東京文化会館
マルク・ミンコフスキ(指揮) 東京都交響楽団

シューマン:交響曲第4番ニ短調作品120(1841年初稿版)
チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調作品74《悲愴》


Rugby  World Cup の喧騒から今日は逃れました。何せ全試合観戦予定(6試合を除きTV)ですので慌ただしいこと。

シューマンの4番というと、中学生の頃NHKで見た、バーンスタインとVPOがあります。第3楽章で飛び上がっていたのを覚えています。それとフルトヴェングラーの壮大で夢幻的な演奏。
ミンコフスキは初稿ということで、スッキリして勢いのある本来の形を表現します。リズムのある疾風怒涛のような曲です。目から鱗ですが、恣意的でないところがミンコフスキです。

後半のチャイコフスキー、激情的、いわゆるロシア的、華やかな宮廷風、いろんな演奏を聴いてきました。しかし第1楽章から感傷的にならず淡々と進めます。第2楽章も見かけの優美さ、第3楽章も空元気です。第4楽章になり何の飾り気もない悲痛な様相を呈し、心が揺さぶられます。チャイコフスキー6番の原点だなと感じた次第です。
クラリネット、ホルン、客演のファゴットの他管楽器が魅力的です。金管もやたらと咆哮しません。弦はやや硬質な響きのする力強い演奏です。いい演奏会でした。いまだシューマン4番が頭の中で鳴り響いています。
コンサートマスターは矢部達哉氏。

ソロカーテンコール1回。

Rugby World Cup2019 その6

Pool C
フランス33-9アメリカ(東平尾公園博多の森球技場)
フランスはLopez, Fickou、Ramosらの滑らかな動きやふんわりとしたキックで攻め込みます。またPicamolesの柔らかそうに見える突進、やはりフランスです。ところが64分に12-9まで追い上げられ、まさか前回のトンガ戦?
しかし66分以降は3トライを重ね突き放しました。
アメリカもイングランド戦も含めどうしようもない大敗はしません。基礎ができており何となく強いのがアメリカです。人材豊富(多分)でフットボールのセンスもあり、これから強くなるかもしれません。

Pool C
イングランド39-10アルゼンチン(東京スタジアム)
たぶん17分頃のLavaniniのレッドカードでアルゼンチンは万事休すでした。カッとなったのか、偶々か。イングランドはFWで優位に立ち、フォードの好キック、俊足のメイ、ワトソン、デイリーのバックスリー3人が走り回ります。ところがファレルのキックは不調。後半立ち直りましたが。
アルゼンチンは70分Moroniの1トライのみ。途中出場のCreevyが密集のボール争奪戦で活躍しましたが。両チームとも点差ほど実力差はないと思いますが、少しの差の積み重ねがこのような結果になりました。